| 15年程前、(まだデザイン室勤務の頃)私は小売店研修を受けていました。 すでにメガネデザイナーとして数年のキャリアがあったのですが、 デザイナーは売り場を知らなくてはならないと言われ、土曜日にメガネ売り場に出勤していました。 10時にオープンするのですが9時頃に入口のガラス戸付近に人が立っているので 手動で開けてあげました。その方はメガネケースを手にして「おたくで買ったメガネだけど 使おうと思ったらレンズが外れていた」といってケースを差し出しました。 そのメガネはまだ新しくしかも左右のレンズともテグスが切れていました。 申し訳ない気持ちで一杯となり、また接客には慣れてないこともあり、 お客様の目の前でテグスを取り替える手が震えました。 「どうか今度は切れませんように・・」と願いを込めてお客様の背中を見送りました。 興奮した状態で店長に報告すると「ああ、よくあるよ。特にチタンは良く切れるね」と あっさり返されました。 この時から「切れないナイロールフレームへの挑戦」が私の中で静かに始まりました。 |
| 1954年にフランスのエッセル社(現エシロール)によりレンズの下半分を ナイロンテグスで支えるナイロールフレームが発表される。 1968年に日本ではホヤガラスがエッセル社のナイロールフレームを中心とした メガネフレームを順次発表し、レンズからフレームまで販売する総合メーカーとなる。 また、日本では、エッセル社のパテントを避ける為にTリムが開発されるが本格的なブームは エッセル社のパテントが切れてからになる。 今ではすっかりメガネのスタンダード商品として定着しているが、わずか50年足らずの 歴史でしかないことを忘れてはならない。 ツーポイントフレームでさえ200年の歴史がある。したがってアンティーク枠に ツーポイントはあっても未だナイロールフレームは存在しない。 何十年後にはアンティークコレクションにナイロールフレームが登場するだろうが 当時のナイロンテグスはすべて切れているはずである。 |
| ナイロールが開発された1954年当時、CR39レンズはまだ開発されていないので すべてガラスレンズのはずです。 硬く割れ易いガラスレンズに溝を掘ろうと考えたエッセル社を称えます。 レンズの溝加工ツールと加工マニュアルを作ったエッセル社を称えます。 リムにクッション材を入れたエッセル社を称えます。 ナイロンテグスが切れるというリスクを背負ってまでナイロールフレームを発表したエッセル社を称えます。 彼らの発想と勇気が新しいフレームをわずか30年という期間で世界のスタンダードにしました。 そして、この20年間さまざまな意匠チェンジを繰り返し現在に至っています。 |
| 釣りをする人は少なくともテグスは結べます。 また、色々な仕掛けの為の結びも存在します。 それらの殆どは何重にも巻きつけその摩擦力で留めています。 けっして穴に通して留めません。何故なら簡単に切れるからです。 釣りでは釣り糸は結んで留めるのが常識です。結び目は大きく醜いですけど。 この結び目は最近開発されたフロロカーボンテグスを使えばかなり目立たなく出来ます。 フロロカーボンテグスの末端を熱で溶かすと大変硬い塊になるので一回の巻き付けでも 巻き付けの摩擦力と硬い塊の結合力で十分な強度が得られて結び目も小さく出来ます。 この結合方法は釣りの本には紹介されていませんから、たぶん私が初めての発見者です。 将来釣りの世界でも一般的になるかも知れません。 メガネではテグスは穴に通して引っ掛けて留めるのが常識です。切れることも常識です。 定期交換も常識です。 この常識はメガネ店にとって好都合でもあるので、なかなか改善されません。 二つの常識が存在しています。 |
| 釣りはしませんがテグスを買うために釣具売り場には良く足を運びます。 太めのテグスを買うので「サクラマスでも釣るのですか」と聞かれたこともあります。 テグスの引っ張り強度がいったいどれだけあるのかテグスメーカーに 問い合わせてみましたが企業秘密といって教えてくれません。 大雑把ですが10号のテグスに重りを巻きつけて持ち上げると確実に 10kg以上のものを持ち上げる実力を持っています。 さらに限界を極めようとすると10kg以上の重りにテグスをどのように巻きつけるかが問題になってきます。 たとえば、コンクリートブロックだとブロックの角で切れてしまいます。 だから正確に測ろうとすると円柱状の鉄にテグスを何重にも巻きつけて持ち上げなければなりません。 持ち上げる手の方にも何重にも巻きつけるのでテグスが手に食い込んで痛いです。 つまり、テグスの本来の強度は素手では切れない程強いのです。 |
| フロロカーボンテグスの耐久性について製造メーカーに問い合わせてみました。 以下製造メーカーさんのご返答 拝啓、お問い合わせの件、フロロカーボンもプラスチック樹脂である以上、 ある程度の経年劣化は避けられません。 但しナイロンとの比較では紫外線、温度、湿度等の影響は少ないです。また耐薬品性については、 フロロカーボンは圧倒的に強くほとんどの薬品で影響を受けることはありません。 それから経年劣化についてですが、これは製造データを持ち合わせておりませんが、 5〜10年で例えば2割とか3割とか強力が落ちることはございません。 ただし保管状態によって、ある程度(40度以上)であれば、それなりの劣化が予想されます。 ちなみに個人的には5年以上前の糸を現実に釣りで使用し、何ら問題が起きておりません。 お客様のご質問にきちんとお答えできず、大変申し訳ありませんが、あしからずご了承下さい。 早々 |
| メガネを最近はアイウェアと呼ぶ メガネをファッションの一部として捉えることに異論はないがウェアと呼ぶにはいささか無骨すぎる。 人間の体は柔らかくデリケートで、それを包み込むウェアは柔軟な生地を 体に合わせて採寸し立体的に縫製されている。 それに比べメガネは未だ(手で持って使う)道具のように硬い。 コンセプト「Y」は顔から外すとき全身がプルプルと振動する。 その様は、さながら体の一部のようである。 生き物のように感じるこの眼鏡こそウェアに最も近い。 そして、このメガネの真価は、今までのメガネに困っている人に顕著に表れる。 メガネがずり落ちる人、耳が痛い人、強度近視の人、体の弱い人、等にである。 メガネを「アイウェア」と称し、スタイルばかりを追いかける手法はもう中国に任せましょう。 コンセプト「Y」はちゃんと人と向き合い小売店とワンオフ工房で作り上げる眼鏡です。 |